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アニサキス

アニサキス症について

アニサキスは、海産魚介類に寄生する線虫の一種です。

アニサキス幼虫は、白色または半透明の細長い糸のような形をしており、長さはおよそ2~3cmです。サバ、アジ、サンマ、イワシ、カツオ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなど、さまざまな魚介類に寄生します。

アニサキス幼虫が寄生した魚介類を、生または冷凍・加熱が不十分な状態で食べると、幼虫が胃や腸の壁に刺入し、激しい腹痛や吐き気などを起こすことがあります。これをアニサキス症といいます。

アニサキス幼虫は魚介類の内臓周辺に多く寄生しますが、魚が死亡して時間が経過すると、内臓から筋肉へ移動することがあります。また、魚が生きている段階から筋肉内に寄生している場合もあるため、内臓を取り除くだけで完全に予防できるとは限りません。

アニサキス症の主な種類

アニサキス症は、幼虫が刺入した場所や症状によって、主に次のように分けられます。

急性胃アニサキス症

アニサキス幼虫が胃の粘膜に刺入することで発症します。

生または加熱・冷凍不十分な魚介類を食べた後、一般的には数時間から12時間以内に、突然の激しいみぞおちの痛みが起こります。

主な症状は次のとおりです。

  • 突然の激しいみぞおちの痛み
  • 波がある、繰り返す胃痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 胃の強い不快感
  • 腹部膨満感

急性胃アニサキス症は、アニサキス症の中で比較的多くみられます。胃カメラで胃粘膜に刺入している幼虫を確認し、鉗子で摘出することが診断と治療になります。

急性腸アニサキス症

アニサキス幼虫が小腸や大腸の壁に刺入して発症します。

魚介類を食べてから十数時間後から数日後に、強い腹痛が現れることがあります。

主な症状は次のとおりです。

  • 強い下腹部痛
  • お腹全体の痛み
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹部膨満感
  • 発熱
  • 便やガスが出にくい

腸アニサキス症では、腸管の壁が強くむくみ、腸閉塞に似た状態になることがあります。まれに腹膜炎、腸重積、腸管穿孔などを起こし、外科的治療が必要になる場合があります。

消化管外アニサキス症

非常にまれですが、アニサキス幼虫が胃や腸の壁を越えて腹腔内などへ移動し、炎症や肉芽腫を形成することがあります。

症状や必要な検査は発生した場所によって異なり、腹部CTなどを用いた専門的な評価が必要です。

アニサキスアレルギー

アニサキスを抗原として、アレルギー反応が起こることがあります。

幼虫が胃や腸の壁へ刺入していなくても、次のような症状が現れる場合があります。

  • じんましん
  • 全身のかゆみ
  • 皮膚の赤み
  • まぶたや唇の腫れ
  • 腹痛、吐き気
  • のどの違和感
  • 息苦しさ
  • 血圧低下
  • 意識が遠のく

呼吸困難、のどの腫れ、強いふらつき、意識障害などがある場合は、アナフィラキシーの可能性があります。直ちに救急車を呼んでください。

このような方はご相談ください

  • 刺身や寿司を食べた後、突然みぞおちが激しく痛くなった
  • シメサバを食べた後に強い胃痛が起こった
  • 生魚や加熱不十分な魚介類を食べた後に吐き気・嘔吐が出た
  • 数日前に魚介類を食べ、その後から強い下腹部痛が続いている
  • 腹痛が波のように繰り返している
  • 市販の胃薬を飲んでも強い痛みが改善しない
  • 過去にアニサキス症になったことがある
  • 魚介類を食べた後にじんましんが出た
  • 魚介類を食べた後に息苦しさや全身のかゆみが出た
  • 食べた魚にアニサキスらしい虫が付着していた

診察時には、直近だけでなく、数日から2週間程度の魚介類の摂取歴が診断の手がかりになることがあります。

食べた魚介類の種類、食べた日時、生・炙り・酢締めなどの調理方法、症状が始まった時間をお伝えください。腸アニサキス症では、摂取から数日経過して症状が現れる場合があります。

速やかな受診が必要な症状

次のような症状がある場合は、アニサキス症だけでなく、腸閉塞、消化管穿孔、急性膵炎、胆石症など、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。

  • 我慢できないほど強い腹痛が続いている
  • 痛みが次第に強くなっている
  • お腹が大きく張っている
  • 便やガスが出ない
  • 嘔吐を繰り返している
  • 水分を摂っても吐いてしまう
  • 高熱がある
  • お腹が硬く、触れると強く痛む
  • 冷や汗や強いふらつきがある
  • 意識が遠のく

大量の嘔吐、意識障害、呼吸困難、のどの腫れ、急速に広がるじんましんなどがある場合は、通常の外来受診を待たず、救急車を呼んでください。

アニサキスが寄生する主な魚介類

アニサキス幼虫は、さまざまな海産魚介類に寄生します。

代表的な魚介類には、次のものがあります。

  • サバ
  • アジ
  • サンマ
  • イワシ
  • カツオ
  • サケ
  • ヒラメ
  • マグロ
  • タラ
  • イカ

これらの魚介類を食べると必ず発症するわけではありません。

アニサキス幼虫が生きたまま残っている魚介類を、生または冷凍・加熱が不十分な状態で食べることが発症につながります。刺身や寿司のほか、冷凍処理をしていないシメサバなどでも発生することがあります。

アニサキス症の検査・診断

アニサキス症には、どのような魚介類をいつ食べたかという問診が非常に重要です。

痛む場所、食後から発症までの時間、嘔吐やアレルギー症状の有無などを確認し、胃型と腸型を区別しながら検査を選択します。

胃カメラ検査

生魚などを食べてから数時間後に、突然強いみぞおちの痛みが起こった場合は、急性胃アニサキス症が疑われます。

胃カメラでは、食道、胃、十二指腸を観察し、胃粘膜に刺入しているアニサキス幼虫を探します。

虫体が確認できた場合は、内視鏡用の鉗子でつかみ、摘出します。

胃粘膜には、刺入部を中心として、発赤、むくみ、びらんなどがみられることがあります。ただし、これらの所見はアニサキス症だけに特有のものではありません。原則として、虫体を直接確認することが診断上重要です。

当院では、患者さんの状態、食事をした時間、検査枠などを確認したうえで、胃カメラの必要性と実施時期を判断します。

胃カメラ検査について

腹部CT検査・腹部超音波検査

腸アニサキス症では、通常の胃カメラでは小腸の大部分を観察できません。

腹部CTや腹部超音波検査を行い、腸管壁の限局したむくみ、腹水、腸閉塞などがないかを確認します。

当院で腸アニサキス症や腸閉塞が疑われる場合は、患者さんの状態に応じて、CT検査や入院治療に対応する医療機関へご紹介します。

超音波検査について

血液検査

血液検査では、炎症反応、脱水、白血球数などを確認することがあります。

アニサキス特異的IgE抗体検査が診断の補助として用いられる場合もありますが、発症直後には陰性となることがあり、過去の感作によって症状がなくても陽性になる場合があります。

抗体検査だけで、現在のアニサキス症を確定することはできません。症状、食事歴、胃カメラや画像検査の結果を含めて総合的に判断します。

アニサキス症の治療

胃アニサキス症の治療

胃アニサキス症では、胃カメラを行い、胃粘膜に刺入している幼虫を鉗子で摘出します。

虫体を摘出すると、激しい胃痛が比較的速やかに軽減することが多くあります。

複数の幼虫が刺入している場合もあるため、胃の中を丁寧に観察し、見つかった虫体を摘出します。

現時点で、アニサキス幼虫を確実に死滅させる有効な内服治療薬はありません。胃アニサキス症では、内視鏡による虫体の摘出が基本的な治療です。

腸アニサキス症の治療

腸アニサキス症では、胃カメラが届かない小腸に病変があることが多く、一般的には保存的治療を行います。

患者さんの状態に応じて、次のような治療が行われます。

  • 絶食
  • 点滴による水分補給
  • 痛みや吐き気に対する治療
  • 腸閉塞などの経過観察

アニサキス幼虫はヒトの体内では長期間生存できず、多くの場合は1週間程度で死滅するため、保存的治療で改善することがあります。

ただし、腸閉塞、腹膜炎、腸重積、腸管穿孔などが疑われる場合は、入院や手術が必要になることがあります。

アニサキスアレルギーの治療

じんましん、かゆみなどのアレルギー症状がある場合は、症状に応じたアレルギー治療を行います。

呼吸困難、のどの腫れ、血圧低下、意識障害などを伴うアナフィラキシーでは、緊急の医療処置が必要です。

以前、魚介類を食べた後に重いアレルギー症状を起こしたことがある方は、アレルギー専門医への相談が必要になることがあります。

アニサキス症の予防方法

十分に加熱する

アニサキス幼虫は、中心部を70℃以上で加熱するか、60℃で1分以上加熱すると死滅します。

表面を軽く炙っただけでは、魚の内部にいる幼虫が生き残る可能性があります。中心部まで十分に加熱してください。

適切に冷凍する

アニサキス幼虫は、-20℃で24時間以上冷凍すると死滅します。

家庭用冷凍庫では、食品の中心部が-20℃に達していない場合や、開閉によって庫内温度が変動する場合があります。「自宅で一晩冷凍したから安全」とは一概に判断せず、適切に冷凍処理された生食用魚介類を選ぶことが重要です。公的な予防基準は-20℃で24時間以上です。

鮮度を保ち、速やかに内臓を取り除く

丸ごとの魚を購入・釣獲した場合は、冷えた状態を保ち、できるだけ早く内臓を取り除きます。

魚が死亡して時間が経つと、内臓付近のアニサキス幼虫が筋肉部分へ移動することがあるためです。

内臓は生で食べないでください。

目視で確認する

アニサキス幼虫は白色または半透明の糸状で、肉眼で確認できる場合があります。

調理時には魚の表面や切り身をよく確認し、見つけた場合は除去してください。

ただし、魚の内部に入り込んでいるものや、見えにくいものもあるため、目視だけで完全に予防できるとは限りません。加熱または適切な冷凍と組み合わせることが重要です。

酢・塩・しょうゆ・わさびで予防できますか?

一般的な料理で使用する程度の食酢、塩、しょうゆ、わさびでは、アニサキス幼虫は死滅しません。

シメサバも、酢で締めただけでは予防できません。生食する場合は、適切な冷凍処理が必要です。

また、「よく噛めばアニサキスを噛み切れる」という方法も、確実な予防にはなりません。

アニサキス症のよくある質問

Q.刺身を食べた直後に腹痛が出ました。アニサキスですか?

A.胃アニサキス症では、生魚などを食べてから数時間から十数時間後に、激しいみぞおちの痛みが起こることが一般的です。

ただし、食中毒、胃・十二指腸潰瘍、胆石症、急性膵炎などでも強い腹痛が起こります。症状だけで判断せず、強い痛みがある場合は受診してください。

Q.痛みが軽くなれば受診しなくてもよいですか?

A.アニサキス症の痛みは、一時的に軽くなった後に再び強くなることがあります。

また、腸アニサキス症やほかの急性腹症では、時間の経過とともに悪化する場合があります。強い痛みを繰り返す場合、嘔吐や腹部膨満を伴う場合は受診してください。

Q.胃カメラをすれば必ずアニサキスを見つけられますか?

A.アニサキス幼虫が胃の中にいる場合は、胃カメラで確認・摘出できる可能性があります。

ただし、幼虫が小腸へ移動している場合や、魚介類を食べてから時間が経っている場合は、胃カメラで見つからないことがあります。症状や経過に応じて、腹部CTや超音波検査などが必要です。

Q.アニサキスは人から人へ感染しますか?

A.アニサキス症は、アニサキス幼虫が寄生した魚介類を食べることによって起こります。

通常、人から人へ感染する病気ではありません。

Q.一度アニサキス症になると、再発しやすくなりますか?

A.一度治療しても、その後にアニサキス幼虫が生きたまま残っている魚介類を食べれば、再び発症する可能性があります。

また、過去にアニサキスへの感作が成立している方では、再び摂取した際にアレルギー反応を起こす可能性があります。

Q.冷凍・加熱すればアニサキスアレルギーも防げますか?

A.冷凍や加熱によって幼虫を死滅させることは、胃や腸への刺入によるアニサキス症の予防に有効です。

一方、アニサキスアレルギーは虫体成分を抗原として起こるため、過去に魚介類でじんましんやアナフィラキシーを起こした方は、加熱・冷凍だけで自己判断せず、アレルギー専門医へご相談ください。

Q.市販の胃薬や痛み止めで治せますか?

A.アニサキス幼虫を確実に取り除いたり死滅させたりする市販薬はありません。

強い胃痛がある場合に市販薬だけで様子を見ると、胃アニサキス症以外の緊急疾患を見逃す可能性もあります。生魚を食べた後に突然強い腹痛が起こった場合は、医療機関を受診してください。

生魚を食べた後に強い腹痛がある方へ

アニサキス症は、生または冷凍・加熱が不十分な魚介類を食べた後に、突然の激しい胃痛や下腹部痛を起こす病気です。

胃アニサキス症では、胃カメラでアニサキス幼虫を確認して摘出することで、症状の速やかな改善が期待できます。

一方、魚介類を食べてから時間が経過している場合や、下腹部痛・腹部膨満・嘔吐がある場合は、腸アニサキス症や腸閉塞などの可能性も考える必要があります。

当院では、食事内容と発症までの経過を確認し、胃アニサキス症が疑われる場合は胃カメラの必要性を判断します。CT検査や入院治療が必要と考えられる場合は、対応可能な医療機関へご紹介します。

  • 生魚を食べた後、突然みぞおちが激しく痛くなった
  • シメサバや刺身を食べた後に吐き気・嘔吐が起こった
  • 数日前に魚介類を食べ、強い下腹部痛が続いている
  • 市販の胃薬を使用しても痛みが改善しない
  • 魚介類を食べた後にじんましんが出た

このような方は、港区芝浦・田町の芝浦クリニックへご相談ください。

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